30年以上焼肉店をやって記憶に深く残る出来事があります。1996年大阪堺市のO157集団食中毒。2001年の日本初のBSE牛発生。2011年のユッケ食中毒事件。 　そして今回の新型肺炎の流行。   　O157病原性大腸菌による食中毒事件は、焼肉店というより生食の…… more 多い和食・寿司店が大打撃をこうむりました。当時原因は不明のまま、カイワレ大根が強く汚染食材として疑われました。テレビで、日本に生野菜を食べる習慣はない、サラダを危険だと言って、消毒をするよう勧めた有識者もおりましたね。瞬間的にアツくなって、バカも休み休み言えって、温泉施設のテレビに毒づいちゃいましたけど。   　すぐに消毒殺菌に関する情報を集めたのは一般市民としてではなくて、わたしが商売として飲食店をやっているからです。医学部の研究室にいる友人に論文や情報をもらいました。関心は2点ありました。もやしを生で食べることはないですが、大豆もやしを自家栽培しているので、同じスプラウトととして心配したのです。もう一つは、当時店で出していたユッケ・レバ刺しなどの刺身の安全性でした。   　その結果出した結論は、一番殺菌効果の高く残留性のないオゾン水殺菌装置が店におくのが最適だということ。レバ刺し・ユッケは出さないことにするというものでした。当時属していた焼肉研究会でもその話をしたのですが、わたしはどこに行っても、気の弱いオポンチ男なので誰も相手にしてくれませんでした。店のお客様に、ユッケ・レバ刺しがないと言うと帰られたこともありました。   　その初代のオゾン水殺菌装置は頑丈な機械で、壊れることなく、今も本店と、二代目の機械のメンテナンス時には、支店において使っています。   　2001年の日本初の狂牛病発生、さらに北海道で発生し、関係者が自殺されたことは忘れることができません。BSE牛（の特定部位）と人の経口感染ということを発表したのは1996年のイギリス政府でした。今でも悔やまれるのは、そのことを知っており本も読んで、先ほどの研究会でも話していたのに、本当のところは、評論家・他人事のように何も具体的に考えていなかったことでした。   　日本で、北海道で発生して、初めて恐怖に襲われました。自分のやっていることで人を病気にさせたのではないか。 　札幌で行われた農水省の主催のシンポや、別の講演会に出席したりしました。その時感じたのは、主催者の立場を受けて、専門家は、大事なこと・踏み込んだことは語らないということでした。イギリスから来た専門家が一番突っ込んだ発言をされていたと思います。   　今でも強く印象に残っているのは、帯広畜産大学での講演会でした。わたしはヤドカリのごとく気が弱いので、そういう場では絶対に質問したりしないのですが、必死だったので、講演された先生（後に日本のBSE関連会議の座長になられました）に、講演後、どうしても聞きたいことを質問しました。あまりに必死でかわいそうだと思ったのか、「その件に関してはまだデータがそろってないんですよ。でも途中のでよかったら送ってあげます。まだ公表はしないでくださいね。」とおっしゃって、数日後論文データを本当に送ってくれたのです。データにほっと一安心したのでした。忙しいだろうに、専門家だけができる誠実さもあることを知ったのです。   　2011年のユッケ・レバ刺しを巡る話については以前書いているので省略します。ただ一店舗で考えても、世間で知られていなければ、同じ業界の一つとみなされて、あまり役に立たないなぁ、という気持ちになりました。   　そして今回の新型肺炎の感染拡大です。当店の営業も大ダメージですが、それ以外で、今店でできることを、できるだけやるつもりです。新聞を読んでも、焼肉店・飲食店ばかりじゃなくて、全業界に影響を与えています。政界にすら。特別措置法なんて怖い法律まで野党も一緒になって出ています。 　こんな時こそ、基本となる少しの知識・兄弟姉妹の問題と考えて差別しないこと・人と人が、笑顔で横につながる人権の論理を忘れないことが大事なんだろうな、と思うおや爺であります。 close

焼肉屋に降りかかってきたもの：O157から新型肺炎まで